あの日、ゲイ雑誌のゲイバーの広告のページと堂山の地図を頼りに僕も初めてこの町にやってきた。
飛び込みで入ったゲイバーで、ゲイ雑誌を見て初めてこの街に来たことを説明すると店子の人が優しく対応してくれた。
その店のカウンターでときには店子の人と会話をしながらときには一人で飲んでいると20代のサラリーマンの人に声を掛けられた。
そして、その夜にその人とHなこともした。
僕は有頂天になっていた。
その夏の僕の目標は「男とHすること」だったから、それが達成できたからね。
相手は27歳のサラリーマンの人で清潔な感じの爽やかな印象の人だった。
今思うと、何か哀しい感じのする初体験だが、その当時は「やった~。男とHできた。」とただそう思って嬉しく感じていた。
その人とはPHS電話で連絡を取り合い、その後も何度も夜に会って逢瀬を重ねた。
しかし、別に付き合うわけでもなく、ただ会ってHだけしていたんだ。
僕は最初はそれだけでも満足していた。
でもだんだんその「夜しか会わない関係」が寂しくなってきた。
別にその人の恋人になりたいわけではなかったけど、会ってHするだけっていうのが虚しくなってきたんだ。
それで何度目だったか(5度目だったか)の夜にラブホテル(堂山には男同士でも入れる一般向けのラブホテルがいくつかあったんだ)に二人で入ったときに僕はこう言った。
「○○さん・・・僕はHするだけってのがつまらなくなってきたよ・・・。会うなら、どっか違う所に行こうよ。これだとHするだけになっちゃうし・・・」
タバコを吸いながら○○さんは面倒くさそうな表情で
「また今度な」と言った。
「今度じゃなくて今日が良い・・・」
そう僕は言ったけど、はいはいと言って彼はキスしてこようとした。
僕はそれを払いのけようとしたが、彼は無理にキスしてきた。
キスしてから僕の耳元に「でも結局したいんでしょ?」と彼は言った。
僕は自分の気持ちを無視されたことに腹が立った。
そして今日はもう帰ると言って僕はホテルから飛び出した。
ホテルを出て堂山の細い路地裏を歩いた。
引きとめに来るかも知れないと何度か後ろを振り向いたけど、彼は来なかった。
僕は堂山の路地裏でその学生みたいな子にゲイショップまでの道を教えてから、ボーと一人でこの街に初めて来たときのことを思い返していた。
楽しい思い出もあれば苦々しい思い出もたくさんあった。
短い間で僕の生活は急変し、色んなことがあった、色んな人と会った。
そういうことを思い返しながら、思わず一人でふふっと笑ってしまった。
そしてQueenのSomebody To Loveを口ずさみながら、A君のバーへ向かった。
『きゃ~~ん えーにーばーりぃーーー ふぁーぃんみぃぃっ
さっばーでぃーとぅううーーーーーーーー らぁぁーーーぶぅ Can anybody find me somebody to love? 』
話を今に戻そう。
ネットでゲイの世界に入れたり、ゲイの人に出会えたりする今と違って、当時は入るのも出会うのも大変だったんだよね。
全体的に「入る年齢」が遅い時代だったから、10代に早く入れても自分と同じ年齢の人を探すのが大変でね。
今はネットで自分と同じ年齢のゲイの人を探すのは簡単でしょ。あと自分の好みの体型の人とかも。
今だとたとえば20代なら20代の子だけで集まったり、そういう若い子だけのイベントとかってけっこうあると思うけど、でも当時はゲイの世界に入って活動していた人って、何て言うか「まとまりがない」っていうか、年齢がバラバラだったんだよね。
当時は「ゲイの世界」に入れてもアンマッチって言うか、フィットしない出会いが多かったと思うよ。特に10代や20代前半で入った人は、年上との出会いやHが多かった時代なんじゃないかな。
ネットの時代になって「ゲイの世界」に早い年齢で入ってくる人が増えてきて、そしてネットの掲示板などで自分のプロフィールや写真などをアップして出会いが出来るようになって、このアンマッチの出会いって少なくなってきてるとは思うけどね。
参加する人が増えるってことは、いろんなタイプの人と出会える機会が増えるし、自分の好みの相手だけ探せるってことだからね。
さて、先日僕は久しぶりにこの堂山の細い路地裏を歩いてみた。
仕事帰りの夕方にスーツ姿で行った。
今はもうゲイバーはほとんど行くことがない。
行くとしてもゲイ友に連れられて年に1回あるかないかくらいだ。昔はよく遊んでいたので、いろんな店子の人と友達になったけど、今ゲイバーに行ってもほとんどの店子の人が変わっているので会話も弾まない。
今この路地裏を歩くのと、19のときに歩いたときとでは、感じるものが違うなと思った。
歩いていると遠くの方にゲイバーのネオン看板が出ているのが見えた。
今は昔と違ってゲイバーなどに行かなくてもネットで「出会う」ことが出来るから、ゲイバーは客が減って90年代のような活気はないらしい。
それでも、そういうネットの時代でも堂山のゲイバーで今日も遊んでいる若い子もいるんだろうなと思った。
そのネオン看板を見ながら、
あの頃自分が感じていた気持ちが少しだけ心によみがえった。
10代や20代前半という若いときにはその年齢の子だけが抱えた気持ちがあると思う。
悩みや不安、開放感などいろんな気持ちを抱えながら
若いときにしか吸えない空気がある。
北区堂山町のゲイバーで今夜も
飛び込みで入ったゲイバーで、ゲイ雑誌を見て初めてこの街に来たことを説明すると店子の人が優しく対応してくれた。
その店のカウンターでときには店子の人と会話をしながらときには一人で飲んでいると20代のサラリーマンの人に声を掛けられた。
そして、その夜にその人とHなこともした。
僕は有頂天になっていた。
その夏の僕の目標は「男とHすること」だったから、それが達成できたからね。
相手は27歳のサラリーマンの人で清潔な感じの爽やかな印象の人だった。
今思うと、何か哀しい感じのする初体験だが、その当時は「やった~。男とHできた。」とただそう思って嬉しく感じていた。
その人とはPHS電話で連絡を取り合い、その後も何度も夜に会って逢瀬を重ねた。
しかし、別に付き合うわけでもなく、ただ会ってHだけしていたんだ。
僕は最初はそれだけでも満足していた。
でもだんだんその「夜しか会わない関係」が寂しくなってきた。
別にその人の恋人になりたいわけではなかったけど、会ってHするだけっていうのが虚しくなってきたんだ。
それで何度目だったか(5度目だったか)の夜にラブホテル(堂山には男同士でも入れる一般向けのラブホテルがいくつかあったんだ)に二人で入ったときに僕はこう言った。
「○○さん・・・僕はHするだけってのがつまらなくなってきたよ・・・。会うなら、どっか違う所に行こうよ。これだとHするだけになっちゃうし・・・」
タバコを吸いながら○○さんは面倒くさそうな表情で
「また今度な」と言った。
「今度じゃなくて今日が良い・・・」
そう僕は言ったけど、はいはいと言って彼はキスしてこようとした。
僕はそれを払いのけようとしたが、彼は無理にキスしてきた。
キスしてから僕の耳元に「でも結局したいんでしょ?」と彼は言った。
僕は自分の気持ちを無視されたことに腹が立った。
そして今日はもう帰ると言って僕はホテルから飛び出した。
ホテルを出て堂山の細い路地裏を歩いた。
引きとめに来るかも知れないと何度か後ろを振り向いたけど、彼は来なかった。
僕は堂山の路地裏でその学生みたいな子にゲイショップまでの道を教えてから、ボーと一人でこの街に初めて来たときのことを思い返していた。
楽しい思い出もあれば苦々しい思い出もたくさんあった。
短い間で僕の生活は急変し、色んなことがあった、色んな人と会った。
そういうことを思い返しながら、思わず一人でふふっと笑ってしまった。
そしてQueenのSomebody To Loveを口ずさみながら、A君のバーへ向かった。
『きゃ~~ん えーにーばーりぃーーー ふぁーぃんみぃぃっ
さっばーでぃーとぅううーーーーーーーー らぁぁーーーぶぅ Can anybody find me somebody to love? 』
話を今に戻そう。
ネットでゲイの世界に入れたり、ゲイの人に出会えたりする今と違って、当時は入るのも出会うのも大変だったんだよね。
全体的に「入る年齢」が遅い時代だったから、10代に早く入れても自分と同じ年齢の人を探すのが大変でね。
今はネットで自分と同じ年齢のゲイの人を探すのは簡単でしょ。あと自分の好みの体型の人とかも。
今だとたとえば20代なら20代の子だけで集まったり、そういう若い子だけのイベントとかってけっこうあると思うけど、でも当時はゲイの世界に入って活動していた人って、何て言うか「まとまりがない」っていうか、年齢がバラバラだったんだよね。
当時は「ゲイの世界」に入れてもアンマッチって言うか、フィットしない出会いが多かったと思うよ。特に10代や20代前半で入った人は、年上との出会いやHが多かった時代なんじゃないかな。
ネットの時代になって「ゲイの世界」に早い年齢で入ってくる人が増えてきて、そしてネットの掲示板などで自分のプロフィールや写真などをアップして出会いが出来るようになって、このアンマッチの出会いって少なくなってきてるとは思うけどね。
参加する人が増えるってことは、いろんなタイプの人と出会える機会が増えるし、自分の好みの相手だけ探せるってことだからね。
さて、先日僕は久しぶりにこの堂山の細い路地裏を歩いてみた。
仕事帰りの夕方にスーツ姿で行った。
今はもうゲイバーはほとんど行くことがない。
行くとしてもゲイ友に連れられて年に1回あるかないかくらいだ。昔はよく遊んでいたので、いろんな店子の人と友達になったけど、今ゲイバーに行ってもほとんどの店子の人が変わっているので会話も弾まない。
今この路地裏を歩くのと、19のときに歩いたときとでは、感じるものが違うなと思った。
歩いていると遠くの方にゲイバーのネオン看板が出ているのが見えた。
今は昔と違ってゲイバーなどに行かなくてもネットで「出会う」ことが出来るから、ゲイバーは客が減って90年代のような活気はないらしい。
それでも、そういうネットの時代でも堂山のゲイバーで今日も遊んでいる若い子もいるんだろうなと思った。
そのネオン看板を見ながら、
あの頃自分が感じていた気持ちが少しだけ心によみがえった。
10代や20代前半という若いときにはその年齢の子だけが抱えた気持ちがあると思う。
悩みや不安、開放感などいろんな気持ちを抱えながら
若いときにしか吸えない空気がある。
北区堂山町のゲイバーで今夜も
コメント